Richard Dawkins リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」の感想

Richard Dawkins リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」の感想

遺伝子と生物進化の理論を、誰にでも解かるようにかなり平易に噛み砕き、それでいて学術的(あとがきの権威ある生物学者達)にも素人目にも魅力的な概念や示唆に溢れるとゆう、奇跡の本。

今回読んだのは増補新装版で、12章と13章が追加されている。まず、訳者の仕事が素晴らしいってのもあるんだろうが、この著者の語り口は科学的正義感みたいなものが感じ取れて好印象を持った。しかし、著者のもちだす根拠はいくらか単純すぎに感じるものもあり、平易に噛み砕いた結果とはいえ、そんな簡単でいいんか?怪しいなとは思ったが、この増補新装版では補注で訂正や誤りについてそれなりに書かれている。

群淘汰の否定と性善説

著者の主張は群淘汰の否定だ。一つの生物は多数の遺伝子の乗り物であり、遺伝子は自己の複製のために様々な戦略(あらかじめプログラムされた行為)をもって乗り物を方向づける。そのような戦略のうちには見かけ上の利他行為が含まれる。この利他行為はまるで集団や種の保存を前提に働いているように見えるが、それは実はある遺伝子がその他大勢の遺伝子がはびこる環境下(遺伝子プール内)で生き残るための利己的な戦略にすぎない、とゆうものだ。

そこから遺伝子が自己の複製を最大限に残す戦略としての、攻撃性、世代間や家族間の近縁度とその投資量、雄と雌の関係、などが語られる。おもしろいのは、遺伝子プール内で多様な戦略がうずまく時には、見かけ上の利己主義が必ずしも生き残りやすいわけでは無いとゆうことだ。例えば、誰かれかまわず攻撃したり、頻繁に繁殖行為をおこなったり、自分だけダニを取ってもらい相手にお返しをしない、とゆうような戦略は、必ずしも支配的にはならない。

僕はなんとなく、性善説と性悪説を思い浮かべてしまった。性善説も性悪説も、結局人間は善の方向に行くとゆう儒教な思想で、遺伝子によるものか(性善説)、文化によるものか(性悪説)の違いはあるが、人間がある淘汰圧を潜り抜け繁栄していくためには、善な方向が目標に定められているのが有効だったのではと思う。

いや、むしろニワトリより卵で、淘汰圧を潜り抜ける方向に善を定めただけだろうか。そんな気がなんとなくした。

ミーム(meme)

ドーキンスが発明、発見したのがmemeだ。模倣子と訳されたりもする。ミームとはどうゆうものかとゆうと、簡単に言えば文化の遺伝子だ。

まず、ドーキンスは全ての生物にあてはまる基本原理を掲げる。(以下引用は利己的な遺伝子第11章より)

すべての生物は、自己複製をおこなう実体の生存率の差にもとづいて、進化する、というのがその原理である。自己複製をおこなう実体としてわれわれの惑星に勢力を張ったのが、たまたま、遺伝子、つまりDNA分子だったというわけだ。しかし、他のものが実体となることもありえよう。

その他の実体とゆうのが文化の遺伝子、memeだ。

旋律や、観念、キャッチフレーズ、衣服のファッション、壷の作り方、あるいはアーチの建設法などはいずれもミームの例である。遺伝子が遺伝子プール内で繁殖するさいにして、精子や卵子を担体として体から体へと飛びまわるのと同様に、ミームがミームプール内で繁殖するさいには、広い意味で模倣と呼びうる過程を媒介として、脳から脳へと渡り歩くのである。科学者がよい考えを聞いたりあるいは読んだりすると、彼は同僚や学生にそれを伝えるだろう。かれは、論文や講演の中でもそれに言及するだろう。その考えが評価を得れば、脳から脳へと広がって自己複製するといえるわけである。

脳から脳へと広がって自己複製する文化の単位がミームだ。しかし、いまいちミームの定義はあやふやで、いろんなところで議論や批判があるようだ。松岡正剛はこんな風に言っている。(以下 松岡正剛の千夜千冊『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンスより)

仮にミームが文化のリプリケーターだとしても、それが利己的であるのか、そこにDNAやRNAにあたるものがあるのかどうか、またミームがつくるアミノ酸やタンパク質が何をさしているのかは、さっぱりわからない。

僕は、ミームがデジタル情報ならわかりやすいなぁと思う。DNAにあたるものがデジタル情報の0と1だ。またなんとなく思い浮かべるのは、漫画の功殻機動隊だ。電脳空間に広がる0と1達は淘汰され、進化していってるように見える。0と1が作るのはプログラムやテキストや音楽、動画だろうか。遺伝子は地球とゆう環境の下に生まれて、自己を複製し生物は進化た。デジタル情報は人間やコンピュータとゆう環境下に生まれて、自己を複製し文化が進化していくのだろうか。

関連・参照・参考

ヒト遺伝子と解説
GENOME MAP│ヒトゲノムマップ

ミームの定義とか
MEME

リチャード・ブロディのミーム学
心を操るウイルス

松岡正剛はまとめるがうまいなぁ。
松岡正剛の千夜千冊『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンス

ミームを話題にしてて興味深い記事。
池田信夫 blog:愛国心の進化
現在思想のために - ドーキンスのと
蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学- - ミーム概念への妥当な理解と脳科学の社会化

photo by Siobhan Curran