ロバート・A・ハインライン『異星の客』の感想

ロバート・A・ハインライン『異星の客』の感想

ロバート・A・ハインライン ( Robert A. Heinlein ) の 『異星の客』 ( Stranger in the Strange Land ) を読みました。

前にも書いたとおり、SFの名作と呼ばれる小説をいくつか読んでいて、またもや印象論になりますが、この本の感想を書いてみます。

結構ページ数のある長編で、かなりいろんなもの、政治・宗教・美術・セックス等を詰め込んでいて、それ自体は素晴らしい事なんですが、あまりに無駄な、弛緩した文章が多い印象です。

おおまかな話の流れは、火星で生まれ火星人に育てられた主人公スミスが地球に帰ってきて、その文化・思考・思想の違いに戸惑いながらも順応していく。そこで、火星の文化と地球の文化を対立させて、地球の文化の矛盾を風刺するってのが作者の狙いなんだと思います。

ただ、この対立の片方にある地球の文化ってのが、当時のアメリカの事だけにしか念頭に置いてなくて、あまりに範囲が狭く、独善的で嫌気がさしました。特に、物語の序盤・中盤は、現在から見るとあまりに方向性の乏しい古臭い風刺と、訳が悪いのかなんなのかアメリカンジョークに癖々しました。

けど、名作って言われるだけの理由はあって、物語終盤のカタルシス、宗教・セックス・カニバリズムを含めた展開は、すごく心地良くて、ある程度は普遍的な主題を含んでるんだろうとは思います。

当時ヒッピーの間でこの本は大流行したみたいで、たぶん宗教・セックス・カニバリズムあたりの描き方が受けたんでしょう。フリーセックスやコミュニティ化がかなりポジティブな、社会進化的到達点とゆうような視点で書かれています。

ただ、事後的にこのヒッピー的な文化について捉えている僕には、チャールズ・マンソンに象徴されるようなものから目を逸せないので、心地よさに不安が混じりますし、主観的で一方的で進化的な文化の受領の仕方には嫌悪します。

SFかどうかわかんないけど、ミシェル・ウエルベックの『素粒子』って小説には、そのあたりの回顧と現在のヒッピーコミュニティの閑散とが書かれていて、その視点で読み比べるとおもしろいです。

参照・参考

photo by ohsoabnormal