島田 雅彦『彼岸先生』の感想

島田 雅彦『彼岸先生』の感想

日本のポストモダン文学、島田雅彦のパロディー小説『彼岸先生』を読んだ。率直な感想としては構成力がすごいなと。

『彼岸先生』は、夏目漱石『こころ』のパロディー小説。

以前、阿部和重の短篇『トライアングルズ』は『こころ』のパロディーだと感想を書いたら、「『彼岸先生』も読め」ってコメントもらったので読んでみました。

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『彼岸先生』はかなり忠実と言えるほど『こころ』と同じような構成になっている。

前半部分は主人公「菊人」の一人称で、小説家であり菊人の師である彼岸先生との出会いや係わりが語られる。後半部分は彼岸先生からの手紙、読者には彼岸先生の過去が知らされる形となっている。

たぶん、『こころ』との差異を楽しむ小説なので、その違いを枚挙しても暇がないけど、構成の大きな違いとゆう点では、『こころ』は先生からの手紙で小説の終わりを迎えるのに対し、彼岸先生では手紙の部分が終わった後に、後日談が三人称で語られる事だろう。この構成の大きな違いは、解説でも蓮實重彦が種明かしをしている。

また、主人公の父も先生も死なず、先生とその奥さんを争奪しあうライバルも死なずと、『こころ』と比べて誰も死なないのが読中にひっかり、その小さな差異が、最後の大きな構成の違いに収斂して行くさまに、構成のうまさを感じた。

あと、智に働けば角が立つ 情に棹せば・・・等々、僕でも知ってるようなベタな夏目名文句を書いちゃうあたりはかわいいなと。