筒井康隆『大いなる助走』の感想

筒井康隆『大いなる助走』の感想

筒井康隆1979年発表の小説『大いなる助走』を読みました。

あらすじ

主人公のあるエリートサラリーマンが自社の悪業を暴露した小説を書いて辛気臭い地方同人文学誌に発表し、それが中央の編集者の目に止まって「直廾賞」の候補となったは良いが会社をクビになって退路の無い主人公は、なんとしても賞を得るために賄賂を渡し更に自らの体を売って「直廾賞」選考委員を買収するが、結局は買収も何も関係無いめちゃくちゃな選考の末「直廾賞」落選となり、怒りに狂った主人公が次々と審査員を襲うとゆう話。

朝倉泉事件

この小説は同1979年に起こった祖母殺し事件、朝倉季雄とゆう高名なフランス語学者の孫で当時高校一年生の朝倉泉が15000字あまりの遺書と犯行計画を残して祖母を殺しその後自殺した事件に、影響を与えたと言われている。

朝倉泉事件参考: 朝倉泉 16年間の生涯

筒井康隆・直木賞・松本清張

また、この小説の連載・発表当時は上記の朝倉泉事件とは別件で結構話題になった小説のようだ。

とゆうのも筒井康隆は三度も直木賞を落選していて、作中でカリカチュアされている「直廾賞」選考委員のモデルは松本清張ら実在の小説家・評論家で、さらに松本清張が編集部に連載中止の圧力をかけたらしいので話題性は十分、筒井氏が私怨を晴らした小説として話題になったらしい。

文壇の内幕を暴露し、かつて直木賞候補になりながら落選の憂き目を見た筒井氏が、私怨を晴らした小説として、発表当時話題になった作品。

「直廾賞」(読みはよくわからない)はいうまでもなく「直木賞」のもじりで、モデルになった選考委員は松本清張、川口松太郎、源氏鶏太、海音寺潮五郎氏らだとされている。

引用元:きまぐれな日々 GW中に読んだ本> これ(大いなる助走)の連載時、当時直木賞の選考委員だった松本清張が編集部に連載中止の圧力をかけたことは知られている

引用元:日本文学賞今昔物語

印象・感想

作中ではSF作家が何度も馬鹿にされ続けるが、それは文壇でのSF作家の評価が低い事に対する皮肉であり、つまりは筒井自身に対する自嘲であり、筒井自身の不満でもあるんだろう。

僕はSF作家が馬鹿にされる場面で幾度も笑ってしまったけど、それがまさにこの小説の象徴で、真っ正面からではなくユーモアを含むソフィスティケートされたやり方捉え方とゆう印象。

暗くカビ臭い文学的閉鎖に陥っている地方同人作家達と、魂を売った商業誌編集者や自堕落な選考委員との双方を過剰にカリカチュアし対比して、文壇や文学界あるいは小説の評価のされ方の矛盾をユーモラスに指摘し、真正面ではなくぼんやりと芸術性・文学性と商業性・娯楽性との非対立を浮かび上がらせた小説なのかな、とゆう感想。

参考・参照

朝倉泉事件参考: 朝倉泉 16年間の生涯

大いなる助走書評: きまぐれな日々 GW中に読んだ本

文学賞について(松本清張が編集部に連載中止の圧力): 日本文学賞今昔物語