ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』の感想

ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』の感想

ルイス・ブニュエル監督、サルバドール・ダリ脚本、シュルレアリスムの代表的映画。1929年公開。

上映時間は16分と短い。現実にある物をごちゃまぜに組み合わせて、「夢」をスクリーンに映し出した様な映画。シュルレアリスムはフロイト精神分析の影響下にある。フロイト的な「夢」を映し出す事を製作者は意図していた。

ダリは、シュルレアリスムの中でも一般受けしやすい、現実にある物体の変化やありえない様な組み合わせを描く事を得意した画家だ。そして、確かに映画とは現実物体の変化と組み合わせを表現するのにうってつけの手段だ。この映画はダリにとって、のちの作風の試金石となったのだろうか。蟻、蝶、時計などなど、ダリのモチーフが溢れてる。

夢を組み合わせただけなので、ストーリーは特にない。ただのイメージの連続。メタファーを深読みしよと思えばいくらでも出来る。交通事故で死んだ女を見て欲情する男。フロイトの『快感原則の彼岸』は1920年発表。

現在において、このような「シュール」な手法はありふれていて、さらに洗練されているので、衝撃度は少ないが、公開当時は凄い反響を呼んだそうだ。公開当時の1929年と言えば昭和4年。日本のエログロナンセンスと呼応してるのだろうか。気になる。

今見てもこれはおもしろいと思ったのは、手に集まる蟻→女性のわき毛→砂浜のウニ、と次々にオーバーラップしながら連続されるイメージ。この組み合わせはなかなか思いつかないよ。たぶんダリの着想だと思うけど、想像力の泉が深い。

アンダルシアの犬

アンダルシアの犬

アンダルシアの犬

冒頭の切れる月と目のシーンや、牛の死体の乗った二台のピアノと首に縄をかけた二人の神父を同時に男が引っ張る(文字に起こすと笑えてくる)シーンなんかも印象に残る。下図の、泉のほとりで裸の女のそばに男が倒れるシーンは構図と風景が綺麗だ。なんとなく雰囲気はモネやルノワールの絵画のよう。

アンダルシアの犬

この映画が凄いのは、迷いが感じられないところだろう。象徴的なイメージの連続で映画を作る時、普通はどのようなイメージをどのような順番で配置するべきかに、一番悩むはず。20代の若かりしブニュエルとダリは、何にも迷わなかったのだろう。

あと、四隅が黒くなっている場面が所々にあるが、これは撮影技術の未熟なためか、それとも何か意図しての事だろうか。