古き良き時代の。ロバート・A・ハインライン『夏への扉』の感想

古き良き時代の。ロバート・A・ハインライン『夏への扉』の感想

ロバート・A・ハインライン『夏への扉』は、長編SFベスト企画などで必ず上位に入ってくる作品。1957年出版。 Wikipediaによると、ハインラインはたった13日間でこの小説を書き上げたらしい。

伏線の出し方はすごくうまくて効果的。出版当時では未来にあたり、小説中で主人公が生きている1970年の科学技術や時代設定、さらにタイムスリップして主人公が見る2000年時のそれらは、実にアイデアが豊富で生き生きとしてる。ジンジャーエールを好む猫「ピート」なんかは印象的だ。

が、約50年も前のSF小説とあって、プロットはそれほど複雑ではない。職人肌エンジニアの主人公は魅力的だと言えば魅力的だし、純粋無垢さだけが取り柄のステレオタイプだと言えばそうともいえる。20歳も年下の親友の妹に熱をあげてる理由もいまいちわからない。

『異星の客』もそうだが、どうもハインラインは性に合わない。
ロバート・A・ハインライン『異星の客』の感想 | www.retujyou.com どうにもならない劣情の種子を植え付けられたばかりに

興味深かったのは、「万能フランク」という家事をこなす人工知能ロボットの、動作原理を解説している部分。

”かくかくしかじかの制限内でこれこれしかじかのものを探せ、探し出したら基本命令を果たせ”というようにプログラムする能力をもっている。基本的な命令は、トーゼン記憶チューブに詰めこめるかぎりにおいて -これがまた、ほとんど制限なしなのだ!- 複雑化することができる。
引用元:ロバート・A・ハインライン『夏への扉』 P54,55

ダートマス会議が行われたのが1956年、そしてフレーム問題が提唱されたのが1969年。たぶん、現実には「万能フランク」は永遠に作業を開始する事が出来ないのだろう。

科学が万能だった、もしくは、科学が万能だと心底信じれた時代の小説でした。今から見ると非常に感慨深く、羨ましいのでした。

そして未来は、いずれにしろ過去に優る。誰がなんといおうと、世界は日に日に良くなりまさりつつあるのだ。人間精神が、その環境に順応して徐々に環境に働きかけ、両手で、機械で、カンで、科学と技術で、新しい、よりよい世界を築いていくのだ。
引用元:ロバート・A・ハインライン『夏への扉』 P306

参考・参照

photo by pasma