宮部みゆき『火車』の感想

宮部みゆき『火車』の感想

登場人物達の顔つきや体型を読み手に喚起させる小説で、特に年配男性の脇役キャラが際立っており、逆に若い女性の登場人物の影が「みっちゃん」以外みな薄い印象を持つのは、単に記述が少ない事だけが理由だろうか、それは主人公が中年男だからだろうか、それとも作者の資質に拠る所が大きいだろうか。

物語の中盤ごろを読み進めている時、一度使ったら使いきりの登場人物があまりに多く勿体ないので、連載かな。とゆう予想と共に、筆者が限られた時間の中で表現する、滞りの一切ない展開の妙と人物類型の豊かさと、静かに淡々と流れる微弱な電流が段々と渦を巻き周りの物質を引き寄せて、そのぽっかり開いた真空の渦の中心に最後に姿を見せる空虚な磁界のように女を描きだす筆力に、驚嘆した。

第6回 (1993年) 山本周五郎賞
1992年3月号から6月号「小説推理」連載、1992年単行本出版の1998年文庫化